オーディオインシュレータの不思議①

仕事は機器の振動低減

いきなり質問:アンプやスピーカの下に置いている「インシュレータ」、何のために使ってますか?
どんな仕事をしていますか?高さ調整ですか?

答え:アンプやスピーカの振動を制御(抑制)しています。その効果は、音を変えることができることです。

では、なぜ音が変わるのでしょうか?多く使われているインシュレータは、円錐の形をしています。
この円錐、底面を床側にしますか?それとも、頂点を床側にしますか?
底面を床側にした場合と、頂点を床側にした場合では、音の変化の仕方が違ってきます。

それ以前に、インシュレータにアンプやスピーカを載せるだけで音が変わることに疑問を持たれませんか?
スピーカの場合はまだ納得いくことでしょう。スピーカの振動が、インシュレータによって変えられて、
出てくる音に影響するのだろう、と。

では、アンプや CD プレーヤなどの電子機器の場合はどうでしょうか?
・・・どう考えても、インシュレータが発電してアンプに電気信号を送るとは考えられませんね。
スピーカと同様、機械的な振動で影響を及ぼすとしか考えられません。
それでは、どのように影響してくるのでしょうか?

その答えは、円錐の形状にあります。頂点から底面に向かって、次第に断面積が広がっていきます。
ホーンスピーカと同じです。ホーンスピーカでは頂点に音を入れて底面から音を出します。
カットオフ周波数より高い音が効率よく放射されます。一方、蝋管蓄音機を思い起こすと、
底面から音を取り込んで、頂点に集めて大きな振動に換えて蝋管に刻み込んでいました。
つまり、円錐は振動伝達機として機能しているわけです。

インピーダンス特性を求めた一例

では、底面を床側にするのか、頂点を床側にするのかどう使えばいいのでしょうか?
その答えは、波動方程式を解くと得られます。が、インシュレータの場合は固体ですので、ホーンスピーカとは違ってきます。
解析の結果、底面を床側にするか、頂点を床側にするかで振動伝達特性が異なってきます。
底面を床側にするとある特定の周波数より低い周波数の振動が床に伝えられます。
一方、頂点を床側にすると、その逆で、ある特定の周波数より高い周波数の振動が床に伝えられます。
つまり周波数選択制でアンプなどに生じた振動を床に逃がすことができるのです
(この場合、ダイオードと同様に逆方向には振動が遮断されます)。

はインピーダンス特性を求めた一例ですが、底面を床側にした実線に対し、
頂点を床側にした破線の特性は、2kHzあたりから高い周波数領域でインピーダンスが小さくなっており、
床に向けて振動を伝達しやすくなることが分かります。一方、2kHz 以下では、その逆で、振動を伝達しにくくなります。
つまり、目的に応じて底面を床側にするか、頂点を床側にするかの使い分けができるわけです。

KRYNAでは、この解析結果を踏まえて後者の使用法を推奨し、高い周波数の振動を床に逃がすことにしています。
特に、音源に含まれる音像定位の情報を最大限に引き出し、雑音感の少ないクリアーな音を追求して、
逃がせる周波数の限度をできる限り低い周波数(5kHz程度)になるよう設計しています。

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